Exhibition

石井友人 “Sub Anaglyph”

2023年2月25日(土)– 3月19日(日)
Sub Anaglyph (Chamaedorea elegans)
194x112cm, oil and acrylic and uv-print
and modeling paste on canvas, 2023

開廊日時:12:00-19:00 土日のみ開廊

近年石井は、自ら撮影した写真を基にキャンバスに油彩を描き、同一写真の天地反転像をUVプリンターによって不鮮明に出力するという工程を経て、人間と機械によるダブルイメージの絵画を制作してきました。《Sub Anaglyph》と題された赤・青のそれらの作品は、朦朧としたイメージとなって視覚を揺さぶります。
アナグリフとは、両眼視差に対応したフィルターを利用し、錯視によって立体映像を得る為の方法の一つですが、両眼立体視の原理自体は1838年のチャールズ・ホイートストーンによって発表され、その原理は現在のVRのテクノロジーにまで繋がる歴史を持つものです。
石井はアナグリフの構造に注目しながらも、アナグリフを産業構造の中でイメージをスペクタクル化する視覚装置とは異なるものとして独自に解釈します。近代産業が眼差しを見せ物へ、消費へと向かわせる傾向を持つものなら、赤・青のフィルターは装置としてその欲望が如実に顕在化したものと捉えられるでしょう。
《Sub Anaglyph》における -Sub- とは「下の」、「下位の」などを意味する接頭辞ですが、石井は左右の視差を利用し過剰な奥行きを与えるアナグリフの構造を、上下の関係性 ー地上と地下の高さ深さの関係性ー へと読み替え、より見えることが供与される近代以降の視覚を、より見えなくなる地下の潜在的領域へと向かわせます。
石井の制作では、地上から地下へ潜入し、地下から地上へ表出する、そのような見えるものと見えないものの往復が希求され、その帰結として、両眼視不可能な組作品としての《Sub Anaglyph》が新たに考案されました。本展では2つの組作品が発表されます。
オープニング・トークではゲストに、詩人のカニエ・ナハ、キュレーターで批評家の四方幸子を迎え、石井と「地底人とミラーレス・ミラー」を共同キュレーションしたアーティストの高石晃の司会により、多岐に渡る話が繰り広げられる予定です。
この機会に是非、石井友人 個展「Sub Anaglyph」をご高覧下さいませ。

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石井友人 | Tomohito Ishii 略歴
1981年、東京都生まれ。2006年、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。
自ら撮影した写真や既存のイメージをソースとして絵画化し、情報の受容装置としての視覚を問題化した作品を発表している。近年は観葉植物をモチーフとした油彩とUVプリントによる、天地反転したダブルイメージの絵画を制作し、都市空間と不可分な人間の記号的認識を変容させる試みを行なっている。アーティスト活動と共に「わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー」などキュレーション活動も展開している。
主な個展に、「地へ、地の上空へ、水晶宮の内へ、外へ」(東京画廊+BTAP、2022年)、 「享楽平面」(CAPSULE、2019年)、「『複合回路』認識の境界」(gallery αM、2012年)。 主なグループ展に、「αM+ vol.2「わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー」(gallery αM、2022年)、「それぞれの山水」(駒込倉庫、2019年)、「新朦朧主義5」(北京清華大学美術館、2018年)、「グレーター台北ビエンナーレ」(台湾国立芸術大学、2016年)、「大和コレクションVII」(沖縄県立博物館・美術館、2015年) 、「15years」(WAKO WORKS OF ART、2008年)、「Portrait Session」(広島市現代美術館、2007年)。
主な受賞歴に、武蔵野美術大学パリ賞(Cité International des Arts滞在、2012年)、ホルベインスカラシップ(2005年)。
https://www.tomohitoishii.com

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オープニング・トーク:2月25日 17:00-18:00 ※無料
石井友人 × カニエ・ナハ × 四方幸子 × 高石晃(モデレーター)
オープニング・パーティー:2月25日 18:00-20:00 ※BBQ +1drink 3000円

お問合せ:ishii.tomohito@gmail.com
DMデザイン:纐纈友洋
助成:公益財団法人野村財団

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登壇者 略歴

カニエ・ナハ | Kanie Naha                                   
詩人。2010年「ユリイカの新人」としてデビュー。2015年、第4回エルスール財団新人賞〈現代詩部門〉。2016年、詩集『用意された食卓』(私家版、のちに青土社)で第21回中原中也賞。その他の詩集に『馬引く男』(2016年)、『IC』(2017年)、『なりたての寡婦』(2018年)、『CT』(2020年)、『九月十月十一月』(2020年)など。
装幀家としても詩集を多数手がけている。2017年、NHK BSプレミアムのドラマ『朗読屋』に出演、東京都現代美術館の企画展「MOTサテライト」に参加。2018年は米アイオワ大学、フィンランド「ラハティ・ポエトリー・マラソン2018」で詩の朗読やパフォーマンスを行う。2019年~東京藝術大学大学院映像研究科主催RAM Associationフェローメンバー。2020年は「さいたま国際芸術祭2020」(さいたま市)、「MIND TRAI 奥大和」(奈良県)、「謳う建築展」(WHAT)に参加。2020年4月~読売新聞「詩を遊ぶ」連載中。装丁、美術、パフォーマンス、エッセイ・書評等、「詩」を主軸に様々な活動 を行っている。
https://nahakanie.wixsite.com/kanienaha-web

四方幸子 | Yukiko Shikata
キュレーター/批評家。美術評論家連盟(AICA Japan) 会長。多摩美・東京造形大客員教授。武蔵美・IAMAS・國學院大学大学院非常勤講師。「対話と創造の森」アーティスティックディレクター。キヤノン・アートラボ(1990-2001)、森美術館(2002-04)、NTT インターコミュニケーション・センター[ICC](2004-10)と並行し、インディペンデントで先進的な展覧会やプロジェクトを多く実現。生涯テーマは「人間と非人間のためのエコゾフィーと平和」。データ、水、人、動植物、気象など「情報の流れ」から、アート、自然・人文科学を横断したキュレーションや執筆のほか、国内外の審査員を歴任。
http://yukikoshikata.com

高石晃 | Akira Takaishi
1985年神奈川県生まれ、東京都を拠点に活動。2010年武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コース修了。主な展覧会に「Inner Surface」(Maki Fine Arts、東京、2021)、「描かれたプール、日焼けのあとがついた」(東京都美術館、2020)、「下降庭園」(clinic、東京、2019)、「紅櫻公園アートアニュアル2018」(北海道)、
「VOCA2011 現代美術の展望・新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、東京、2011)など。2022年に石井友人と共同で「αM+ vol.2「わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー」をキュレーション。
http://www.akiratakaishi.com/

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※CAPSULEと同じビル内のSUNDAYでは、以下の展示が同時開催されております。
都会化された荒野で |In an Urbanized Wilderness
片山初音|Hatsune Katayama 槙原泰介|Taisuke Makihara
会期:2月25日 - 3月28日 水曜休み 11:30 - 20:00 ※店の営業に準ずる
オープニング・パーティーはCAPSULEでの石井友人個展と合同になります。
https://sunday-cafe.jp/