Exhibition
三上晴子 “Suitcases 1993 | 2020”
2020年7月17日(金)– 7月19日(日)
Photo by 山本糾 Ⓒ gallery NW house
12:00-19:00
金・土・日のみ開廊
今年の春、1通のメールが届きました。それは、昨年刊行された『SEIKO MIKAMI-三上晴子 記録と記憶』(NTT出版)を手にしたある読者からのもので、三上晴子(1961-2015)の作品を譲渡したいという内容でした。その作品は、1993年に東京のギャラリーNWハウスで開かれた三上の個展で、6点のスーツケースと並ぶインスタレーションとして発表されました。
《スーツケース(World Membrane: Disposal Containers - Suitcase)》というタイトルの作品は、1992年に東京のP3 art and environmentとシドニーのARTSPACEで行われた個展「地球の皮膜/処理容器」と「被膜世界:廃棄物処理容器」を発展的に受け継いだものです。作品を構成する透明なスーツケースの中に詰め込まれているのは、「事故空気/有害粒子処理缶」「使用済み注射針廃棄コンテナ」「生物災害破棄物袋」「有害液体漏洩・流出処理」「生物災害物質廃棄コンテナ」「科学実験施設、病院などのガラス類廃棄箱」「放射線防護服」「放射性廃棄物コンテナ」「実験動物用廃棄コンテナ」などです。三上は、これらの容器を「皮膜=被膜」として捉えたうえで、空港の手荷物検査場を想起させる空間の演出によって「移動」を暗示しました。
「我々がどのような時代環境の中に生きているかを知らせてくれるのが三上晴子の作品である。*」1980年代半ばから約30年間、情報社会と身体をテーマに制作を行なった作家が他界した後にも、生き残った作品は我々の時代の新しいリアリティと共鳴しつづけています。
今回の展覧会は、生命と世界に対する三上の洞察を、2020年の東京に召喚する試みです。
*熊谷伊佐子「三上晴子―時代を見抜く目」『CURATOR’S EYE ‘93』ギャラリーNWハウス、1993年、22頁
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三上晴子(みかみ・せいこ/1961-2015)
アーティスト。1984年から情報社会と身体をテーマとしたインスタレーション制作に手がけ、1995年からは知覚によるインターフェイスを中心としたインタラクティヴ作品を発表・視線入力による作品、聴覚と身体内音による作品、触覚による三次元認識の作品、重力を第6の知覚と捉えた作品、監視社会と個人の欲望の問題を捉えた作品などがある。2000年からは多摩美術大学情報デザイン学科で教鞭を執った。
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協力:株式会社富士通総研
お問い合わせ先: seiko.mikami.suitcases@gmail.com